寿命と言えば、
落語の噺(はなし)には、生死に関するものが数多くある。
人の命がかかったものでも、タブーと呼ばれるものがない。
いわゆる、何でもアリ。
禁忌や気くばりやデリカシーというものが、まるで見つからない。
死ぬことも笑いにしてしまう。
寿命を笑いにしたネタの一つに『死神』という演目がある。
これは、幕末期から明治期にかけて活躍した初代・三遊亭圓朝が
創作したものだと言われているが、
イタリア・オペラの『クリスピーノと死神』を翻案したものだという説もある。
この噺を紹介したいが、長くなるので、途中経過を割愛して、
最後のところ、主人公が死神と出会って、死神から
「お前を面白いところに連れてってやろう」と連れられたところから話を進めると、
そこは、洞窟。
中には、火を灯したロウソクがぎっしり。
「あれは?」と尋ねると、
「人の寿命だ。ロウソクの火が消えると、寿命が終わるという意味じゃ」
「あっしのロウソクは?」
「あれだ、あの消えかかっている弱々しいヤツじゃ」
「えーっ、もう消えかかっている!」
「そう、お前は、カネに目がくらんで死神に魂を売った、寿命を売ったということじゃ」
「何とか、継いでもらえませぬか?」
「それは出来ぬ」
死神が何にもしないのを見て、自分で継ぎ始めた、
「手もとが狂った。あっ、消えた、、」
というのが「サゲ」らしい。
ところが、いくら落語にはタブーが許されるといっても、
正月など、めでたい席では、さすがにこれで終われないので、
「あっ、消えた火がついた。よかったな~。第二のお誕生日おめでとう」
「コイツは、春から縁起が善(い)いわい」
という明るいサゲで終わるものもある。
また中には、そのあとで、
「誕生日というなら、バースデーケーキを用意しよう」